福田ますみ氏の『Hanada』論説(2023年3・6月号)への書評・疑問―(5)まとめ―

 結局、福田ますみ氏が、月刊『Hanada』の2023年3月号と6月号に載せた論説を何度読み返しても、「小川さゆり氏の主張が虚偽だ」と納得できる根拠はどこにもなかった。

 福田論説の6月号では、冒頭に世界平和統一家庭連合が、立憲民主党の石垣のりこ議員にたいして、同議員のユーチューブチャンネルに投稿されている小川さゆり氏の発言を削除するよう、東京地裁に仮処分命令申立を行った旨、記されている(6月号、294頁・下段)。

 その結果は、「家庭連合の削除要請は全面的に却下された。・・・・・・判断するまでもなく(削除を命ずる)理由がないことから、これを却下する」と(295頁・上段と下段。下線と補足の括弧書きは星本による―下同様)。

 これにたいして福田氏は、「裁判官は合理的常識的な判断を放棄し、詭弁、屁理屈に終始している。彼らによる捏造まで疑われ、およそありえない不当決定(不当判決)である」(同頁)とまで述べている。正直、私は “裁判官が捏造したとの根拠もなしに、福田氏はそこまで言うのか” と大変驚いた。裁判でいつも真実の結論が出るとは限らないが、「裁判官が捏造した」との疑義にはさすがに根拠もないであろうにと、開いた口が塞がらなかった。

 (この地裁の判断を教団は即時抗告して、高裁の判断を仰ぐことになったが、結論が覆ることはなかった。つまり、地裁・高裁の判断として、小川氏の主張は「重要部分において真実に反するとは言えない」が、2023年夏に確定したのである。―2023年9月15日、追記)

 小川さゆり氏による外国特派員協会と著書での告発の意義は、その後、他の宗教2世をはじめとして、多くの関係者が、そのすさまじい被害の実態を赤裸々に告発することになった点である(もちろん、小川氏以前からも、さまざまな被害実態が明らかになっていた)。そうした告発の対象は、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に限らず、いくつかの宗教団体が含まれている。だから、大局的な見地からすれば、福田ますみ氏など世界平和統一家庭連合の擁護者ないし現役信者の一部が、小川さゆり氏のみを批判することは、当該団体の内部では重要な案件に感じられるのかもしれないが、社会的には何の意義も見いだせない。

 小川さゆり氏など複数の被害者が、勇気を出して詳細な告発をしてくれたことに、大いに敬意を表し、心から感謝したい。今後、私たちは、有権者、市民、雇用者、従業員、公務員、宗教の信者、親ないし子など、どんな立場であれこうした被害が起きないように、そして、宗教団体の暴走が起きないように、自分の持ち場で何ができるかを考えていくことが大切だと思う。さらに、政府・自治体も議会も行政も、これまでのように、宗教団体にかなりのフリーハンドを許容するスタンスから、もう少し踏み込んで、より一層「信教の自由に基づく良識ある管轄・監督」となるよう、立法や制度作りを進めてもらいたいと切に願う。

 小川さゆり氏の外国人特派員協会と著書での主張も、第一義的な動機は、単に個人の恨みや家庭内の問題をぶちまけたのではなく、今後はできるだけ被害者が出ないように、という利他と義憤なのだから。

 最後に、これまでは福田氏の『Hanada』論説の3月号と6月号について疑問を呈したが、福田氏は7月号にも論説を上梓している。そこで福田氏は、全国弁連全国霊感商法対策弁護士連絡会)に対する批判を展開している。この7月号の論説については、弁護士の郷路氏が、「はてなブログ」で、詳細に批判している。そのシリーズ最初のリンクを貼っておくので、ぜひ参考にされたい。↓

https://mgouro.hatenablog.com/entry/2023/06/28/170601