福田ますみ氏の『Hanada』論説(2023年3・6月号)への書評・疑問―(1)論説の意義―

 福田ますみ氏による両論説(以下、敬称略で「福田論説」などと表記する)の意義はそもそも何だろうか。今回は、この論説の効果について感想を述べる。
 「両親が覚悟の独占告白 国政を動かす『小川さゆり』の真実」と福田論説3月号のタイトルにあるように、小川さゆり(仮称)氏が、いわゆる2022年12月での「被害者救済法」の成立に影響力があったのは確かだろう。
 しかし、一人の人物の訴えだけで法律が制定されるなどありえない。現に、『産経新聞』では次のように説明されている。「親が信者の『宗教2世』は『被害は長年蓋をされてきた』と評価する一方、『返還される金額は少額で現実的ではない』と救済範囲の狭さについて懸念する声が上がった」(『産経新聞』、ネット版、12月10日)。
https://www.sankei.com/article/20221210-K24XMTDNZZO33P74LUVGAFUC4Y/


 「宗教2世」は、と複数形になっている。小川氏だけではなく複数の宗教2世の話が、被害者救済法の作成過程で参考にされている。福田氏が、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)にたいする世間の批判が間違っているというのであれば、小川さゆり氏の話が「虚言」だなどというよりも、複数の元信者・宗教2世からの告発と批判にたいしても、それぞれの内容がどのように事実と異なるのかを説明すべきだと思う。しかし、それは現時点では教団擁護派からは十分になされていないと私は思う。
 以上の意味で、福田論説は、現役信者を鼓舞する役割はあったかもしれないが、現時点では同教団にたいする世間のイメージを回復するという効果を及ぼしてはいないと思う。
 最後に、小川氏の親が言っていることとさゆり氏の言っていることが食い違っている点については、福田論説では親が言っていることが事実で、さゆり氏の主張は「虚言」と、福田氏は前提しているように見えるが、そうだろうか? それともその判断は留保しているのだろうか? たとえば、3月号の論説の48頁・上段では、(さゆり氏が)「事実でないことをたくさん言っている」との親の言葉を引用しているが、「事実でない」という親の言い分が正しいかどうかについては、何も理由が説明されていない。
 こうした問題については、直接の当事者しか最終的には真実はわからないということは、非常によくあることだ。実際、同教会の勅使河原本部長は、橋田氏と妻の意見の食い違いについて、「真実というのは当事者しかわからない」と説明している(下の動画のおよそ32分から)↓。まさに、そのとおりだと思う。
https://www.youtube.com/watch?v=vZDdVt4TTZo&t=1748s


 福田氏がこのように「最終的には当事者しかわからない」という立場を取っているかどうかは、どうしても両論説からは読み取れなかった。今後、どの立場なのか、そしてその理由は何かを明確にされることを期待する。